スパイスの効果

スパイスは現代医学の源

スパイスは人類発生のときから、薬草として、香油や薫香として、防腐剤として、さらには精力剤や回春剤として広く使われてきました。いわば、現代医学、薬学、化学、食品保存学の源ともいえるほど、人類にとってはなくてはならないものです。世界の歴史は、まさにこのスパイスをめぐって展開されてきた、といっても過言ではありません。

注目すべき四つの効果

薬理効果

スパイスの薬としての効果は、太古より知られており、近代医学や薬学が発達するまでは、薬草として世界各地で盛んに使われていました。これは昔からの香りのいいものは善なるもので、悪魔や悪霊、伝染病を追い払うと信じられていたため、あらゆる病気に薬として用いられました。
これらスパイスの香りや辛みには、生理的にみると唾液湧出効果があり、口に入れると鼻や舌を刺激して口中や胃腸に送られる血液の量を増加させ、駆風剤、健胃整腸剤といった側面も有しています。現在でも、漢方薬、和漢薬、西洋民間薬、生薬として用いられています。

防腐効果

スパイスの精油成分(香りの本体)に、静菌(細菌の発育増殖を抑える)・殺菌効果があることは大昔から知られていました。たとえば、古代エジプトでは、死者の内臓を取り出したあとの腹腔を、シナモン、カシア、クミン、アニス、マジョラムなど香りよいスパイスの精油で洗い清め、腐らないようにしてミイラとして保存していました。 古代ギリシャ・ローマの時代には、コリアンダーが肉類の保存に用いられ、ミントが牛乳の腐敗防止に使われていました。このスパイスの防腐効果は、その香りの成分である精油にあるといわれています。一般細菌にはガーリック、クローブ、オニオン、シナモン、オールスパイスがよく効き、大腸菌にはオールスパイス、シナモン、カシア、クローブが効果的です。そのほかタイム、アニス、コリアンダーなども効果が強いです。しかし最近は食品保存・殺菌・減菌技術が発達し、スパイスの防腐効果を活用する分野は少なくなっています。

防カビ(かび止め)効果

防カビ効果は防腐効果と同じように考えられていますが、かびや酵母に対してはバジル、ベイリーフ、シナモン、タイム、コリアンダー、ミントなどがよく効くようです。
一般にハーブスパイスと呼ばれる香りのいい草、たとえばローズマリー、セージ、マジョラム、オレガノ、しそ、バジル、タイムなどもかび止め効果があります。

酸化防止効果

大昔のヨーロッパ狩猟民族は、獲物の肉の保存にディル、マジョラム、タイム、パセリなどのハーブスパイスを使いました。古代ローマ時代になると、コリアンダーやキャラウェイなどのハーブスパイスを使って、肉、特に油脂の酸化防止に役立てていました。
このように、昔からスパイスは、油脂や油脂を含んだ食品の酸化防止に効果があるといわれていたわけですが、科学的な研究のメスが入ったのは、昭和の初期以降です。
酸化防止効果の強いスパイスとしては、ローズマリー、セージ、しそ、メース、タイム、マジョラム、クローブ、ホースラディッシュ、オレガノ、ジンジャー、からしなどがあげられます。

スパイスの各種効果

スパイス名 抗菌防腐効果 酸化防止効果 薬理効果
オールスパイス  
アニス
スターアニス    
バジル
ベイリーフ  
キャラウェイ    
カルダモン    
セロリシード  
シナモン、カシア  
クローブ
コリアンダー
クミン  
ディル    
フェンネル    
フェヌグリーク    
ガーリック  
ジンジャー  
マジョラム  
ミント  
からし  
ナツメグ    
メース  
オニオン  
オレガノ  
パセリ    
パプリカ    
こしょう  
けしの実  
唐がらし  
ローズマリー  
サフラン    
セージ  
セイボリー    
ごま    
エストラゴン  
タイム
ターメリック    
ホースラディッシュ  
陳皮    
しそ  

(引用元:味公爵)